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推薦のことば

前進しつづけた精神と巨大な成果  伊豆利彦

 百合子は単に小説家と呼ばれるにはふさわしくない。その評論活動は社会、思想、文化の全分野に及んでいる。特に検閲のために思うように小説を書くことが出来なかった戦争の時代には、多くの評論で多様な角度から人生を論じ、時代を批評し、文学の進路を示して、窒息させられそうな人々に生きる勇気を与えた。
 瞠目すべきは獄中の夫に対する九百通にも及ぶ書簡である。それは日本人が世界の歴史に誇ることのできる最大の業績であると思う。

新版『宮本百合子全集』に寄す  加藤周一

 宮本百合子(一九八九~一九五一)は、二〇世紀前半の日本で生き、言論の自由の弾圧に抵抗して戦った文学者である。そのとき軍国日本はほとんど一〇年毎にアジア大陸への侵略と戦争を繰り返していた。当時の文学者の多くは、彼らの立場を変えて戦争を支持したが、彼女は戦争に反対し、決してその原則を曲げなかった。そこには類い稀な思想の一貫性と、人間としての尊厳の輝きがある。年代順に編まれた新版『宮本百合子全集』はそのことを明らかにするだろう。

新しい文学構築の糧  辻井 喬

 我国を絶望の渕に追いやった戦争が敗北で終わった時、私たちの胸中に希望の火を点じてくれたのが宮本百合子の作品であった。それ以来、彼女の文学は常に人間の文学の旗手としての座を守り続けてきた。
 今日、伝統の行方を見失い、ただ奇を衒った貧弱な作品が溢れ、揺らいでいる日常性の上に没思想の花を咲かせている様を見る時、宮本百合子の文学はふたたび読み返されるべき時期を迎えていると言えよう。

二十一世紀に生きる〝若者たち〟に  日色ともゑ

 二十年ぶりに百合子さんの全集が刊行されるとのこと、とても嬉しく思います。弱い人々へのあたたかい眼差しや、正義にむかってつきすすむ強い心、そして女性の自立などを学びました。昨年の生誕百年に改めて「伸子」「播州平野」を読みなおしてみましたが、新鮮な輝きはちっとも色あせず、私に迫ってきました。
 二十一世紀に生きる〝若者たち〟。百合子さんの世界から沢山の、やさしさ、柔らかさ、愛、平和、正義をつかみとって下さい。

成長・発展への不屈の努力に学んで  不破哲三

 宮本百合子の生涯とその作品から、私がもっとも深い印象をうけ、また私なりの研究を思い立ったのは、文学と自身の成長・発展をどこまでも追求するあくなき探究の精神でした。
 とくに日本国民の全体にとってきわめて苛酷な時代だった戦時下の十二年、みずからを豊かにたくましく鍛えあげて、新しい時代に備えた百合子の不屈の努力には、その結実となった戦後の諸作品とともに、いつまでも私たちを励ましてやまないものがあります。

時代の光と陰を鋭く反映  吉開那津子

 宮本百合子の生きた時代は、日本の近代史の中でも最も激しい変遷にさらされた時期でした。そういう時代の先端で生き、書いた百合子の作品は、どの時期のものをとっても、その時代の光と陰を鋭く反映しています。百合子が描いたひとびとの姿を通して、私たちは、父や母、祖父や祖母たちが何を喜び、何を悲しんで今日の日本の礎を築いたかを知ることが出来ます。そして私たちが今日、どういう時代に生きているかということも知ることが出来るのです。